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対話を通じて想いを繋がりや行動に結びつける“対話会”の仕掛け人 富士ゼロックス株式会社 兼田 一明さん

更新日:2019年1月26日




2016・2017年の2年間、北九州市で開催された「北九州みらいのビジネス創り対話会」をご存知ですか?

2年間でのべ600人以上の方たちが、このイベントに参加し、対話を通じて仲間を作り、新たなビジネスやアクションが生まれました。 今回は、このイベントの仕掛け人である富士ゼロックス株式会社の社員で、公益財団法人九州ヒューマンメディア創造センター(以下、HMC) 主幹研究員 でもある兼田一明さんにお話を伺いました。


- 対話会とはどういうものですか?

兼田さん:対話会とは、参加者が対話を通じて地域課題テーマを特定し、参加者同士が自発的にアイディアを持ち寄り、人脈作りを通じて解決を目指すものです。 富士ゼロックス(株)で長年研究しているコミュニケーション技術に基づいて設計・運営されています。富士ゼロックス(株)では、「みらい創りプロジェクト」として、岩手県遠野市をはじめとした全国で展開し、対話会を通じて復興支援や地域課題の解決、地方創生のプロジェクトが生まれています。 各地の対話会では、富士ゼロックス(株)の社員が地域ディレクターとして担当し、地域の住民のみなさんと一体となって対話会を作り上げています。私も富士ゼロックス株式会社の社員で、北九州の対話会を担当するため、2016年4月からHMCの主幹研究員として常駐しています。 富士ゼロックス(株)というと、複合機や複写機のイメージが強いと思いますが、その前提として社会のコミュニケーションをより活発にするという企業哲学があり、その手段として複合機プリンターや様々なソリューションをお客様へお届けしています。


- 具体的に対話会はどのように進められるのですか?

兼田さん:全6回の対話会では、『人脈形成』『テーマの特定』『テーマの具体化』のフェーズを経て、参加者が持っている想いや理念を語り合い、その中で自分たちが出来ることを発見し、事業として参画できるテーマを特定していくというストーリーで進められます。 対話会は、主催者の目的に沿って全体及び毎回の内容を、専門的な知識やスキルを持った富士ゼロックス(株)の地域ディレクターが設計をします。そして、実際の対話会の現場では、その地域の方々が司会進行を担当します。そうすることで、参加するみなさんがより「自分ごと」として対話会に参加するようになります。対話会の設計には専門的な知識やスキルが必要ですが、現場ではそういった知識・スキルを持たない人でも成立できるスキームになっています。3年目を迎える長崎県壱岐市の対話会は、運営のかなりの部分を地域のみなさんが担っていますね。


- 近年は地方創生の取組に対話会を活用している地域も増えているそうですが、なぜですか?

兼田さん:対話会は地域のみなさんが、それぞれの想いを共有し、地域に何が必要か、そして自分たちで何ができるかということを、対話を通じて考えていきます。あくまで主体は地域のみなさんなので、そこで生まれたアイディアは地域のみなさん自身で実行されます。これまでの地域活性化や地方創生では、外部からの素晴らしいアイディアがあってもそれを具現化するプレイヤーがいないことで、形骸化してしまう、継続できないということが多かったと思います。地域のみなさんの想いに基づいたアイディアとともにプレイヤーも生まれていく、だからこそ地域に根付いた活動に繋がる、そんな対話会だからこそ、地方創生に活用されているんだと思います。


- 北九州で対話会を実施することになったきっかけは?

兼田さん:九州で最初に開催された長崎県壱岐市の対話会に、HMCの職員の方が参加されたのがきっかけです。HMCが掲げる「北九州e-PORT構想2.0」の実現と対話会の親和性が高いと感じていただき、北九州e-PORT推進機構主催による対話会の実現へと繋がりました。


- 北九州の対話会にはどのような方たちが参加されましたか?

兼田さん:北九州では2016年・2017年の2年間開催し、延べ600人を超えるみなさんに参加いただきました。参加者は会社員を中心に、シニアの方、大学生、NPOや市民活動に携わっている方など、非常に幅広い層のみなさんが参加されています。北九州に対する熱い想いを持っている方が本当に多かったですね。



対話会に向け準備が進められる会場の様子


- 北九州の対話会の特徴は?

兼田さん:それまでの対話会では、その成果は地域のみなさんの自主的な活動や行政の取組へと繋がっていましたが、北九州では成果をビジネス創りに設定しました。もちろん、これまでの対話会でも結果としてビジネスに繋がったものもありましたが、最初からビジネス創りを成果としたのは初めてで、それまでの対話会とは異なる設計が必要となるなど、私にとっても大きなチャレンジとなりました。





- 実際に対話会を通じたビジネス創りはどうでしたか?

兼田さん:対話会で生まれたビジネスの種を、いかにビジネスとして作り上げていくか、この点にはかなり苦労しました。 また、北九州e-PORT推進機構では、2017年から「北九州みらいのビジネスプランコンテスト」を開催し、対話会から生まれたビジネスプランもコンテストに参加しています。実際にビジネスに繋がったものもありますが、ビジネスプランを作るための時間の短さや法律や規制、マーケティングなどの専門分野の知見不足などにより、十分に準備できないものもありました。

確かにビジネス創りは難しいことではありますが、対話会から生まれるビジネスは、参加したみなさんの想いから、仲間が集まり、ビジネス化されていくため、本当に地元に愛され、応援されるビジネスになると考えています。地方における新しい起業の形になる可能性は十分にあると感じています。


- 北九州での対話会を担当されて嬉しかったことは?

兼田さん:昨年度の対話会からビジネスが生まれたことですね。テーマオーナーの強い想いとリーダーシップから、子育て支援、保育所・託児所を運営する株式会社ハピクロが誕生し、2018年4月、正式に開園を迎えます。テーマオーナーの熱い想いとメンバーのアイディアが具体的な形になったことは本当に感慨深いです。私自身、一生忘れない経験となり、心からみなさんに感謝しています。


- 残念ながら北九州での対話会は終了となります。

兼田さん:2年間での終了となるのは非常に残念です。たくさんの方に参加いただきましたが、ビジネス創りという点では、もっとできることがああったんじゃないかと反省する部分もあります。

ただ、この2年間を通じて、対話会という手法のノウハウや、参加されたみなさんの対話の経験、そして対話会を通じて出会えた仲間やビジネスのアイディアは、しっかりと北九州に残るものだと考えています。そういったものが、今後、北九州で形となっていくことを楽しみにしています。


- 今後の兼田さんの活動は?

兼田さん:私は九州で実施されている各地の対話会をサポートしていく予定です。実は九州は全国的に見ても、最も対話会が実施されている地域なんです。富士ゼロックス(株)では、対話会のスキームを全国的に広げていきたいと考えており、これからは九州で培った対話会のノウハウが全国の対話会に展開されていく予定です。

私は山口県長門市の出身で、初めて経験した大都市が北九州市でした。初めて訪れた小倉の街並みや到津遊園地は今でも強く記憶に残っています。ですから、私としても北九州に対する思い入れは非常に強いです。今回、対話会が終了することで北九州を離れますが、今後も何らかの形で北九州との関わりを持ち続けたいと考えています。



北九州での対話会が終わってしまうのは大変残念ですが、対話会を通じて生まれたビジネスやアイディア、そして繋がりが、これからさらに色々なものを生み出してくれると感じます。今後、この成果がどんな形で花開くか楽しみですね。そして、兼田さんがまた北九州でご活躍いただけることを楽しみにしたいと思います。

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