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放置自転車で終わらせない〜NPO法人北九州サイクリングプロジェクト

「いつかは北九州マラソンのように道路を封鎖して自転車の大会をやりたい」そう話すのは、『NPO法人 北九州市サイクリングプロジェクト』理事長、吉元尚志さん。2017年に発足し、まだ駆け出したばかりの団体であるが、現在理事7名、会員12名が所属しており、提携している団体も合わせて約50名で活動をしている。ここではいらなくなった自転車の保管場所を作ったり、放置自転車の部品を使って新しい小物を作ったり、自転車を使った子ども向けイベントを通して自転車の普及活動を行ったりと事業のさらなる拡大に向けて、様々な取り組みを展開している。



北九州市には自転車専用レーンがあるのにそこを走る自転車はほとんどいない。約3~5億円かけて作られた自転車専用レーンがまったく活用されていないことに漠然とした疑問を持ったという吉元さん。この疑問がNPOを立ち上げるきっかけとなった。

自転車に乗る人のモラルへの意識もあり、信号無視をしたり、スマホをしながら自転車に乗ったりする人もまだまだいる…。自転車と歩行者の事故も多く起きている。自転車といってもれっきとした『軽車両』である。だが、自転車を軽視する傾向があるため、マナーを守れるような街を自治会や町内会と協力して意識改革をしていきたいと言う。

北九州市サイクリングプロジェクトでは、主に放置自転車の問題に取り組んでいる。「放置自転車」と言われて、まず思い浮かぶのは、乗り捨てられて路上に置かれたままの自転車やスーパーに駐車されたままの自転車ではないだろうか。しかし、それだけではない。「マンションの駐車場に止めてたけど、乗っていないうちにいつの間にか撤去されていた!」「路上に駐車していたら撤去されてしまった!」という場合もある。しかし、引き取る際に料金がかかったり、わざわざ保管場所に取りに行く面倒さがあったりして、買い直してしまう人がいるのが現状だ。そのため、実際に回収された自転車を取りに来る人は30~40%に留まっている。このようにして回収された自転車は放置自転車となる。北九州市では、人口の2割が自転車を持っていると言われており、その数は約18万台。そのうち、2割は放置され、その数は約4万台に亘る。北九州市サイクリングプロジェクトでは、自転車の回収はすぐには出来ないため、「二週間経っても移動させない場合は撤去します」というタグを自転車につけ、その後防犯登録のあるものに関しては警察署に委託し、そうでないものは回収する。捨てるつもりで置いているのか、たまたま置いているだけなのかの線引きは難しいが、こうして回収された放置自転車は2か月保管され、所有者の移行を行ったあと、まだ使えるものは再利用、古くなったものはパーツごとに再活用を行っている。ライトの部分を使って防災グッズとして手回しライトを作ったり、時計やテーブルを作ったりしている。またチェーンをキーホルダーやコースターにするなど、さまざまなアイデアで試作を繰り返している。手はかかるが、元手はかからない自転車にはもっと利用価値があるとする吉元さんは「まだ試作段階ではあるが、やっていて面白い」と話した。商品化に向けて現在も研究を重ねている。


出所)NPO法人 北九州市サイクリングプロジェクト提供

自転車は運動不足解消に繋がり、環境にも優しい。もっと多くの人に自転車の良さを知ってほしいと吉元さんは話す。昨年6月と9月に、他NPO団体と共同で子ども向けの「キックバイク選手権」を開催した。キックバイクとは、ペダルのない自転車のことで地面を蹴って前に進む自転車のこと。自転車にまだ乗れない2~6歳の子どもが多かったそうだが、各回、30人ずつ参加し、参加者からは「また参加したい!」と好評だったそうだ。このように、イベントを通して自転車の魅力を発信し、自転車の普及活動も行っている。


出所)NPO法人 北九州市サイクリングプロジェクト提供

 今後は、「志を持った同志を色々な年代でもっとたくさん集めて活動を行いたい。自転車には自動車ほど法律が厳しくないため、どうしても乗り手のモラルが希薄になってくる。もっと地域に密着して声かけ活動を行って、事業の拡大と自転車への意識の向上を目指す」と強く意気込んでいた。北九州市サイクリングプロジェクトは無償で活動を行っているが、自転車の回収費や商品開発、イベント開催には、資金が必要となってくる。気になった方はぜひホームページをチェックし、自転車のことについて立ち止まって考えるきっかけにしてほしい。


NPO法人 北九州市サイクリングプロジェクト

〒803-0845

福岡県北九州市小倉北区上到津2-1-17スズキビル1F

TEL ‪093-581-5252 FAX 093-581-5262

URL http://www.cyclingproject.org/


記事:北九州市立大学 酒井つぐみ・福住彩香

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