北九州市小倉北区清水にある学生服専門のリユース店「ecoco」は今年の4月にオープンしたばかりだ。現在は北九州市の小中高40校ほどの制服や体操服を取り扱っており、おおよそ元値の三分の一以下の価格で販売されている。仕入れられた制服などは引き取った後クリーニングに出したり染み抜きを丁寧に行ったりしており、新品のようにきれいなものも多い。
店主の田中さんによると、店を始めたきっかけは、昨年12月にテレビで中古の学生服を買い取り、販売している四国の店が紹介されているのを目にしたことだった。それまで店を経営した経験はなかったが、「これなら私にもできる」と思い立ち上がったという。
しかし始めるにあたっては、さまざまな苦労があった。北九州市の学校数はわかってもどのその学校の制服に関する情報は少なかった。引き取ったものの、すでに制服がモデルチェンジされていたという失敗もあったという。制服の引き取りを宣伝するために学校の卒業式に合わせてチラシ入りのティッシュを配布しようと試みたが、行くことができる校数には限界があった。そんな困難な状況にも、田中さんは不安を感じることはなく、やる気に満ちあふれていたという。そこには、田中さんの子どもの貧困に対する思いがある。世帯収入と子どもの学力は関連しており、「貧困の連鎖」が大きな社会問題となっている。学生服をできるだけ安く、きれいに届けることで、さまざまな事情を持つ家庭の「わが子にも他の子と同じように教育を受けさせてあげたい」と思う親心を少しでも支えたいというのが田中さんの願いだ。
現在の課題は、リユースした学生服の情報や事業を始めた思いを本当に必要としている人たちにどう知ってもらえるかということだ。ただ単に安く制服を売りたいわけではない。子供の教育費などに困っている家庭の負担を少しでも減らす手助けがしたい、と考えているが、それをチラシやホームページだけで届けることは難しい。
「いつかもっと広い場所にお店を移して、半分は制服リユース、もう半分は子供食堂のような学習支援のスペースを作りたい。子供を中心にいろんな世代の人が関われるアットホームな空間づくりを目指したい」と田中さんは語る。夢への挑戦はまだ始まったばかりだ。
学生服リユース ecoco
営業日：火・木・土・日
営業時間：13:30~18:00
住所：小倉北区清水１丁目16-16
TEL:090-9728-4895
記事 北九州市立大学 原田萌黄・橘好