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ストークサポート~特別養子縁組という1つの選択肢~

更新日:2020年3月7日

NPO法人ストークサポートは一人で悩んでいる妊婦さんに寄り添い、味方になれるような支援がしたいという思いから2015年に設立された。

予期せぬ妊娠や育児の相談、特別養子縁組のあっせんが主な活動だ。出産前に病院や役所で必要な手続きの仕方がわからないという妊婦さんが多いという現状を受け、病院への同行支援や母子手帳取得、生活保護申請などの行政手続きの支援も行っている。

現在、和歌山・東京・福岡を拠点に全国で活動している。本部は和歌山県にあるが、今回は福岡事務所(北九州市小倉北区)に所属する相談員の秦(しん)さんにお話を伺った。


〈写真1:ストークサポートリーフレット〉


ストークサポートでは、妊婦さんから赤ちゃんを養子に出したいと相談されても、初めから特別養子縁組の方向性で話は進めないという。なぜそう思ったのかを聞き、その下に隠れているニーズを探すことから始める。親族やパートナーへの相談を促したり、その上で協力が得られない、行政の支援も受けられない、妊婦さんも赤ちゃんも共倒れの可能性があると判断した時に、最後の手段として、特別養子縁組を案内している。

特別養子縁組を委託した妊婦さんでも、産後は“自分で育てたい”と気持ちが変わる場合も少なくない。だからこそ、親子関係が消滅する、我が子に一生会えなくなるといったリスクをしっかり伝えることが必要になる。決意が固まっていない場合は特別養子縁組の受託はせず、方向性が定まるまでの間、再び相談に乗りながら、場合によっては、児童相談所に一時保護してもらうなどして妊婦さんの決意が固まるのを待つそうだ。

思わぬ妊娠をした人のほとんどは周囲に相談できずに孤立している妊婦さんが多い。罪悪感を抱きながらも赤ちゃんを遺棄してしまうというニュースを耳にすると心が痛む。同時に、もしかすると今ストークサポートに相談に来ている妊婦さんや、特別養子縁組で赤ちゃんを委託され、今自分の生活を取り戻している女性もその当事者になっていたかもしれないと考えると、自分たちが行っている支援の必要性を感じる、と語る。

サポートしていく中で、ご本人の納得のいく方向に導くができたと感じた時、この活動をしていてよかったと感じるという。特に初産の場合は、妊婦さんから立ち合い出産をお願いされることもある。「一度中絶も考えた妊婦さんが、自分たちに相談していくにつれ“やっぱり産もう、自分では育てられないけど養子縁組で命をつなごう”と思いとどまって出産を決意し、一度は諦めかけた命が産まれて、大きな産声を上げて生きたいと必死に訴えかけている姿を見たときは、言葉では表現できない感情があふれます」と秦さんは話す。続けて、「心から待ち望む人の元に繋ぐことができ、実母さんも新しい生活を始めている姿を見たときにこの活動をしていてよかったと感じます」とやりがいを語ってくれた。

また、委託後に実母から匿名でアンケートに回答してもらっており、そこに感謝の言葉や「相談してよかったです」と書かれているのを見ると、1人の命と、1人の女性の心は救えたかもしれないと実感するという。

〈写真2:実母様によるアンケート〉


養親(養子を受け入れる側)のサポート体制も整えている。家庭裁判所の審判確定までの間のフォロー、養親同士の交流会や勉強会を行う。また、困ったことがあればいつでも相談するように伝え、養親が孤立しないよう密に連絡を取っている。また、月1回の定期メールで赤ちゃんの成長の様子を報告してもらうようにしており、赤ちゃんの現状把握も欠かさない。

ストークサポートはNPO法人であり、活動内容も見えづらいことから、病院等に信用してもらうまでに時間がかかることが多い。活動するうえで病院との連携は必須であるにも関わらず、病院内の出入りを制限されたり禁止される場合もあり、支援が円滑に進まないこともあるそうだ。これには、ひとつずつ病院と関わることで、信頼を得ていくしかないという。特別養子縁組という制度への理解が進むことで、一人でも多くの命を救うきっかけとなることを願う、と秦さんは話す。2015年に設立されたストークサポートはまだ歴史が浅く、長期的に児童を追いかけているデータが少ないのも、今後取り組むべき課題のひとつだそうだ。今後は養親と児童にどのような支援が必要か、経過を追いながら検討し、柔軟かつ迅速に対応していきたいという。

ストークサポートのスタッフは全員女性である。また、それぞれ社会福祉士、精神保健福祉士、看護師、保育士、助産師などの有資格者であり、養親当事者も在籍しているため、その専門性を活かしてあらゆる相談に対応できるというのがストークサポートの強みだ。

「予期せぬ妊娠や子育てに関するあらゆる悩みを解決する一つの選択肢として、特別養子縁組制度があるということをもっと周知していきたい。」それが秦さんの想いだ。


〈写真3:事務所内の様子〉


【特定非営利活動法人ストークサポート】

福岡事務所:福岡県北九州市小倉北区馬借1丁目9-8 トーマスタワー2012号室

TEL : 080-4359-0016

MAIL : stork.sin.1810@gmail.com(相談員:秦 菜央美さん)



記事:北九州市立大学 藤井茉衣・川本一輝

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