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「野鳥も人も地球のなかま~公益財団法人 日本野鳥の会~」

更新日:2020年1月29日

野鳥というのは不思議な生態をしていて、知れば知るほどおもしろい。そんな野鳥を守ることが、自然を守ることに繋がる。野鳥をシンボルとした自然保護活動の大切さをお話してくれたのは、日本野鳥の会北九州支部事務局長の前田さん。

北九州支部の活動は、野鳥を観て楽しむ(探鳥会)、野鳥の調査・研究、野鳥と野鳥の生息地の環境保護の3項目を基本に行われている。なかでも支部が最も力を入れているのは野鳥と野鳥の生息地の保護活動で、怪我をした野鳥がいれば行政の担当部署に保護をお願いしたり干潟などの保全活動を行っている。現在は、北部九州に残された有数の干潟である曽根干潟がラムサール条約に登録できるような法的に保護されることを目標にしている。

〈曽根干潟に現れるダイシャクシギ(日本野鳥の会北九州支部 提供)〉


野鳥に少しでも興味がある人には、まずは探鳥会に参加してもらいたいと前田さんは話す。探鳥会では、毎回必ず見たい野鳥が現れるとは限らず、10回通っても2~3回しか見ることができないこともある。しかし、参加者は野鳥を見れた時の興奮や感動を求めてまた参加する。この探鳥会は、毎月第1日曜日の、小倉南区の曽根海岸定例探鳥会をはじめ、年間約40回の探鳥会を実施しており、会員はもちろん、非会員も1回100円で参加することができる。

〈曽根干潟定例探鳥会の様子(日本野鳥の会北九州支部 提供)〉


近年、前田さんが頭を悩ましているのは風力発電である。「環境にやさしい」と言われる風力発電だが、回転する風車の羽根に野鳥が衝突(バードストライク)し、死亡する事故が各地で発生している。この事故による野鳥の死亡数は国内でこれまでわかっているだけで約570羽(実際はこの数倍から10倍と推測)。しかし、街中の建物などへの衝突による死亡数に比べれば桁違いに少ないため重要視されておらず、地球温暖化対策のため各地で風力発電は増え続けている。この問題に対して支部は、「1羽の野鳥の命を救えずに何千、何万羽の鳥の命が救えるはずがない」という思いから、環境アセスに意見書を提出し、建設後の影響についても注視している。


福岡県内には北九州支部を含め4つの支部があるが、北九州支部ならではの強みは、設立までの歴史と充実した会員サービスにあるという。支部の設立前、12~13人の野鳥好きが集まり日本各地の離島に調査を兼ねて野鳥の観察に行っていたことが始まりで、1972年に財団法人日本野鳥の会の支部(北九州支部)となった。この歴史から北九州支部は調査力に優れていると評価され、現在も毎年福岡県から野鳥に関する調査依頼を受けている。また、会員には、毎年探鳥ツアーを実施し、2019年は富山県立山で念願のライチョウが観察できたそうだ。会員を飽きさせず、長く楽しんで活動してもらえるように常に工夫が凝らされている。


〈チュウヒ(日本野鳥の会北九州支部 提供)〉


支部設立から来年で48年目を迎える北九州支部だが、継続の秘訣は、支部と会員の考えの合致にあるという。支部の役員は全員ボランティアで運営を行っているため、野鳥を通じて自然を守りたいという思いが人一倍強い。会員は野鳥に興味があり、かつこの支部の考えに賛同している方がほとんどだ。そのため保護活動や普及活動、寄付の呼びかけにも応じてくれる。


前田さんは、活動で見られる会員の喜ぶ顔や、支部の懸命な保護活動に対する励ましの言葉をもらえた時にやりがいを感じると言う。


北九州支部の現在の会員数は約280名(2019年12月現在)。しかし、会員にならなくともインターネットで手軽に野鳥に関する情報が得られる時代になったためか、会員数は近年右肩下がりなのが現状。会員数を増やすことが、現在の課題であるという。野鳥も人も地球のなかま。一人でも多くの人に野鳥の魅力や保護することの大切さを知ってもらい、更なる保護活動に励んでいきたいと前田さんは話す。



【公益財団法人 日本野鳥の会】

問い合わせ先:日本野鳥の会北九州支部



記事:北九州市立大学 岩井遥・井上知佑

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