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海の魅力とリアルを伝え、豊かな海を次世代に伝承していく 〜一般社団法人ふくおかFUN 代表 大神弘太朗さん〜




福岡の博多湾を中心に、海と人をつなぎ、自然を次世代に伝承していくための活動に取り組む一般社団法人ふくおかFUN

今回は代表の大神弘太朗さんを中心に、スタッフの大江さん、土田さんにお話をお聞きしました。


- 現在の活動を教えてください。

大神代表 博多湾を中心に、水中調査・観察・撮影、海ごみの調査、それらの情報発信、そして大学・行政・地元の漁師の皆さんや企業の方々と一緒にアマモの育成を行うなど、水中環境を今よりもっと良くしていく実践にも取り組んでいます。

海の環境は、海中の酸素の減少や栄養過多、限られた種だけにとって恵まれた環境になったりと、複数の要因が絡み合って、様々な問題が生じています。何か1つの問題を解決するのではなく、そういった課題全体に取り組んでいく団体です。


- 活動を始めたきっかけは?

大神代表 大学に入学してダイビングを始めて、海にすっかり魅了されました。

大学4年生の時に渡った西表島で、自然の豊かさだけでなく、自然に対する島民の接し方、考え方に感銘を受けて、就職の内定を辞退して、西表島でネイチャーガイドやダイビングインストラクターをしていました。

その後、25歳の時、自分の目で世界の自然を見ようと思い立って、バックパッカーで世界中を旅したんですが、その道中、東日本大震災が起こりました。

自分の生まれ育った国が大変な状態なのに、自分は好きなことだけやっていていいのか、そんな思いが湧き起こって帰国を決意。

福岡からでも被災地のためにできることとして被災地への物資支援や写真洗浄のボランティア等に取り組み、それと同時に、ダイバー仲間と現地での瓦礫撤去や水中捜索活動もしました。そんな活動を通じて、ダイバーだからできる社会課題の解決に取り組みたいという想いを持ち始めました。そして機が熟した2014年にふくおかFUNを設立しました。


- 具体的な活動は?

大神代表 福岡市共働事業提案制度を活用した事業に取り組んでいます。行政と非営利組織が共通の課題解決に取り組んでいく制度ですね。地行浜(福岡ドーム近くの人工海浜)の環境調査や市民向けの環境啓発事業(2019年度終了)、博多湾の海底ごみの調査・啓発事業の2つに取り組んでいます。

共働事業は、立場も想いも異なる行政との事業のため苦労することもありますが、だからこそできることも多く、その後の活動の広がりといった面では成果は大きいと感じています。共働事業を通じて、関係者や地元の皆さんを巻き込んだ展開も生まれたり、共働事業をきっかけに、ふくおかFUNや行政の事業として継続されたりするものもあります。

それ以外にも行政からの委託事業、企業のCSR活動、講演やイベントの企画運営などを行っています。

事業化が難しい課題に向けた活動を行う際は、助成金を活用することもあります。


<海の環境を良くするためのアマモの植え付け活動>


<200名での海中海岸同時清掃イベント>


<学校での授業“海の学校”の様子>




- 活動で大切にしていることは?

目の前にいる相手との『対話』を大切にしています。それは、皆さんとの出会いの一瞬一瞬が、海の魅力や課題が伝わっていく大切な機会だと考えているからです。

僕の場合は、西表島や東日本大震災といった場面に直面してきたからこそ、今の活動に繋がっています。やはり人が動くためには、場所・場面が重要で、自分たちはその場所・場面作りをしていかないといけないと考えています。そのために僕たちは、しっかりと水中の事実を伝え、その上で場所・場面を提供していく。まずは海の魅力を伝えて、「海っていいね」と感じてもらい、その上で自分たちが何をできるかを自発的に考えてもらう。100人いれば100通りのアプローチがあることが理想ですね。それぞれができる方法で、できる範囲で取り組んでいく。その中で、たまに僕らのような団体と一緒になって、普段ではできないようなことにも取り組んでもらう。将来的にはそんな形を目指しています。


- 博多湾の現状は?

大神代表 福岡市で暮らす多くの市民は、マイナスのイメージを持っていたり、そもそも興味・関心がなかったりという人も多いですね。物流といった経済の視点は持っているものの、そこには自然があって、漁師さんが漁をしていて、捕れた魚をおいしいと言いながら食べているということを知らない。もちろん、その海が抱えている問題も知らない。博多湾に対して、“自然”としての視点があまり感じられないですね。

そんな中でも、市民レベルでは様々な活動が続けられています。福岡市でも「博多湾保全計画」が進められていて、確実に海は豊かになっています。一方で、漁獲量が減少するという新たな課題が発生しています。水は綺麗になったけど、冬は栄養が少なくなり、海苔の色落ちといった新たな問題も発生しています。また、海底には泥がたまっていて、生き物にとって生き息しづらい状態になっています。魚種によってはこの20年間で10分の1にまで漁獲が減っているものもあります。

豊かな海は、見た目が綺麗な海だけではなく、生物の多様性があること、そういうことにやっと博多湾に関わる人たちみんなが認識し始めています。

大江さん 里山という認識は広まっているけれど、里海という言葉はやっと聞かれるようになってきた程度です。山に比べて、海に対する認識はまだ小さいと感じています。


- 博多湾がこうなったらというゴールは?

大神代表 海にはこうなったらゴールという明確なものはないですね。例えば、魚が増え、海藻が豊かな海になっても、その海藻が増えすぎると困ることがある。水が濁って汚いからと、きれいにするだけでは栄養が足りなくなり豊かな海ではなくなってしまう。

そんな風に、それぞれ立場の利害が対立した時、当事者同士では着地点は見つけることは難しい。そこには中立的な立場で、折衷案を提示できる存在が必要です。ふくおかFUNはそんな存在になりたいと考えています。まだ年齢的にも若いですが、海を見てきた年月は一般の人たちよりも長いと自負しています。目先の利益に流されることなく、将来へ向けた長期的な視点を持ち、自分たちの想いをしっかり持ちながら、誠意を持って関係者の皆さんと一緒に様々な課題に取り組んでいくことが必要だと考えています。


- 組織体制は?(2020年3月現在)

大神代表 スタッフは私を含めて常勤が3名、非常勤が4名。2020年4月、長年ボランティアとしてかかわってくれた大学院生も新卒として入社します。新卒採用は初めてのチャレンジです。

活動を支えるサポーター(賛助)会員は30名程度です。

ボランティアさんも30名程度います。ボランティアさんには、スタッフとほぼ同じ情報量を同じ熱量で伝えています。ボランティアさんとは、毎年夏前にキャンプを開催しています。午前中はグループワーク、昼から一緒に遊んで、翌朝解散といった感じで。夏に向けて士気を上げていく恒例イベントで、毎年20人くらいが参加していますね。

また、毎期末にはボランティアさんも含めてスタッフ向けに活動報告会を実施しています。自分が大事にしていること、こういう気持ちでやっているんだという想い、これからこんなことをやっていきたいといったことを話しています。そういったことを理解してもらえれば、自分以外の誰が話しても、それはふくおかFUNの言葉になる。大事にしたいことを理解してもらえれば、スタッフそれぞれが考えながらやっていくことで、僕が想像するよりも楽しいこと、大きなことができると考えています。

大江さん 私はボランティアとしてふくおかFUNに関わり始めました。自分だけでは海を伝えることに限界があるけれど、その想いをふくおかFUNには託せると思って参加しました。ちょっと関わろうと思っただけだったんですが、始めてみると参加できる活動の案内が楽しみになって。それが縁で現在はスタッフになっています。


<スタッフとボランティアのみなさん>


- これからの活動、目指しているものは?

大神代表 明確には描いていません。これまでの5年間では、こういう風になるかなと思い描いていたものとは全く違ったものになっているんですよね。自分が想像したよりも、ちょっと前に進めている感覚があります。それは、しっかりと計画を決めて進めてきたというよりも、目の前の問題や現場を大切にしながら事業を実施してきたからこそと考えています。机上であれこれと考えるのではく、実際に海に行って、関係者と話をして、事実・課題を明確にして事業化していく。そして、その過程で見えてきた新たな課題に対処していけるようなフットワーク・行動力をこれからも持っていたいと考えています。10期を迎えたときにも、同じスタンスで活動できていることが目標ですね。

それから、少しずつではあるけれど、“博多湾ではふくおかFUNが活動している”という認識を持ってもらえてきているように感じています。ただ、博多湾以外での活動においてはまだまだです。多くの人に聞く耳を持ってもらうために、ふくおかFUNの認知度を上げていくことも必要だと考えています。

一方で、これからスタッフが増えてくることでの組織作り、これから活動を広げていくためにどうしたらいいのか、そういったこともしっかりと考え取り組んでいく必要があると感じています。



<今回お話を伺った大神代表(右)、大江さん(中央)、土田さん(左)>

明確な答えのない“海”をフィールドに、長期的な視点を持ちつつ、事実に基づきながら多くの関係者と一緒に課題解決に真摯に取り組んでいるふくおかFUNさん。何よりも海への熱い想いがストレートに伝わってきました。本当に素敵な出会いとなりました。これから博多湾に限らず、様々な地域での活動も楽しみです。

ぜひ、みなさんも身近にある海について、改めて考えてみませんか?



<一般社団法人ふくおかFUN>

 〒819-0044 福岡県福岡市西区生松台3丁目19-5

 電話・FAX番号 092-407-6970

 メールアドレス  uminogakko@fun-fukuoka.or.jp

 ホームページ   http://fun-fukuoka.or.jp


※現在、ふくおかFUN はYouTubeチャンネル『ダイバー先生』で)海の生きものたちを紹介する動画や、陸上と海中の違いを検証する水中実験動画、水中映像にダイバーの呼吸音をのせたヒーリング動画を投稿しています。

ぜひ、ダイバーだからこそ発信できる動画の数々をお楽しみください!

YouTubeチャンネル『ダイバー先生』 

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