真剣に、そして熱く自分の仕事について話す社会人と、その話を真剣に聞く子どもたち。“働くこと”を大人と子どもが真剣に語る、そんな場が北九州で生まれています。その活動は、ボランティアグループの北九州キャリア教育研究会が実施する『夢授業』です。
今回は北九州キャリア教育研究会の代表 木原大助さんに、活動内容や活動への思い、そして今後の展開についてお話を伺いました。
- まずは『夢授業』とはどんな活動なんですか?
木原さん:『夢授業』は、仕事をもつ社会人が、職業人として自分の仕事の内容や意義、どうやったらその職業に就くことができるか、その仕事の良いところはどんなところかといったことを子どもたちに伝えるキャリア教育プログラムです。1度の『夢授業』で20~80の業種の人たちが参加しています。
『夢授業』では、職業人が学校の体育館に点在してブースを作り、約2時間の間に、子どもたちは1ブース15分で複数のブースを回りながら、職業人の話を聞き、そして質問をして対話をしていきます。
- 『夢授業』が始まったきっかけは?
木原さん:2013年、荻原小学校から卒業を間近に控える6年生を対象に、社会人の方から働くことを子どもたちに伝えて欲しいという依頼がありました。もともとイベントを企画したりすることが好きだったこともあり、せっかくなら子どもたちがまた受けたいと思える授業にしようと思い、知人に声をかけて最終的には27業種の職業人が集まりました。1回だけのイベントのつもりだったんですが、生徒はもちろん先生にも好評で、その後も別の学校からも実施して欲しいと依頼を受けるようになりました。そして、継続的な活動とするために2015年に北九州キャリア教育研究会を立ち上げました。
- これまでの活動実績は?
木原さん 2013年・2014年は1校、2015年は7校、2016年は約20校、そして2017年は約30校を予定しています。これまで延べ2,375人の生徒と744業種の職業人が授業に参加しています。実施しているのは小学校が中心ですが、中学・高校でも実施しています。
- 活動が始まって約5年経ちますが、どのような思いからこの活動を続けられているのですか?
木原さん:私は生命保険会社に勤めて、これまで16年間、様々なご家庭を訪問しライフプランニングに携わってきました。本当に色んなご家庭を見てきて、子どもたちの置かれている環境に対して、長年モヤモヤした気持ちを持ち続けていました。そんな課題意識から、10年前くらいから子どものためにできることはないだろうかと思い、ボランティアでイベントを開催したり、児童養護施設を退所する若者の支援に取り組むNPOの運営に携わっていました。活動を続けていく中で、大きく社会が変わっていく現在、その社会に併せて子どもたちの教育も変えていく必要があるのではないかと強く思うようになりました。そんな思いを抱いていたときにこの『夢授業』に出会いました。子どもたちにとって、職業人の大人たちとの真剣な対話を通じて、働くことの意味やその喜び知ることは、将来を考えるうえで非常に重要です。この活動を通じて、そんな考える機会をより多くの子どもたちに届けて行きたいと考えています。
そして将来的には、『夢授業』を受けた子どもたちが大人になって、今度は職業人として母校で『夢授業』を開催する。そんな循環を作っていきたいと思っています。
- 『夢授業』に参加した子どもたちの感想は?
木原さん:夢授業に参加した子どもたちからは、「直接話が出来て改めてその職業になりたいと思った」「どの職業の人からも、その仕事が好きなんだということが伝わってきた」「夢を持つことは人を動かす大きな力になると知ることができた」「大人になるのが怖くて嫌だったけど、話を聞いて、大人も楽しそうだなと思った」「自分もなりたい将来キャリアを伝える側として参加したい」といった感想をもらっています。そして、改めて自分の夢を見つめ直したり、仕事をすることや大人になることを前向きに考える機会になっていますね。
- 『夢授業』にはどれくらいの職業人が関わっていますか?
木原さん:現在、約600人の職業人が登録しています。『夢授業』に参加するメンバーもいれば、準備をするメンバー、そして研究会の運営に携わっているメンバーなど、それぞれの得意分野を活かして活動に参加しています。
- 活動に参加している社会人の感想は?
木原さん:非常にやりがいを持って活動をしていただいていると感じています。実は『夢授業』は社会人教育の側面もあると考えています。職業人の皆さんには、単に自分の仕事を説明するのではなく、その職業を代表して話していただいています。そのためには、改めて自分の仕事にどんな意義ややりがいがあるのか、どこが面白いのかといったことを見つめ直すことになります。自分の仕事を見つめ直し、そして子どもたちと対話することで、仕事への使命感やモチベーションが高まっていくようです。このことは、職業人本人だけでなく、その職業人が働いている企業にも好影響を与えていると思います。
また、活動に参加した職業人が集まる交流会を学期ごとに開催しています。この交流会では、『夢授業』での説明方法の勉強をしたり、活動に参加した思いや感想を共有したりしています。
活動や交流会を通じてできる職業人同士のネットワークは、それぞれの仕事や私生活にも大いに役立っているようです。
- 今後の活動の展開は?
木原さん:『夢授業』を改善していきながら、もっと実施回数も増やしていきたいと考えています。そのためには、この活動を支えるコアメンバーと参加する職業人を増やしていく必要があります。まずは来年度末までに登録職業人2,000人を目指しています。そして、将来的には地区リーダー制を設けて、各地区のリーダーに事前の準備から当日の運営、その後のフォローまでを任せて行きたいと考えています。そうすることで、メンバーのコミットメントも増し、活動が広がりを持ち、さらに内容も充実していくと考えています。
また、学校教育をもっとオープンな場にして、先生も子どもたちも、もっといろいろなことにチャレンジできるような環境づくりに取り組みたいと考えています。ぜひ、新たしい教育の形を北九州発で全国に広げていきたいですね。
そのためにも、もっと多くの大人たちにこの活動に参加してもらいたいと思っています。仲間が増えれば、これまでの活動が充実するだけでなく、また何か新しいものが生まれる可能性が広がります。私たちの活動に限らず、様々なことに関心を持ち、関わりを持つ大人たちが増えていくと、社会を変える大きな力になると思います。
多くの大人たちが自分の職業を語ることを通じて、子どもたちの未来に関わっていく。そんな機会を作り出し、多くの大人たちを巻き込みながら、着実に実施校を増やしている『夢授業』。多くの人たちが意義ややりがいを感じているこの活動には、木原さんの熱い思いとそれに賛同する多くの仲間、そして参加する誰もが楽しむことができる“仕組み”があると感じました。”働くこと”を通じて、当たり前のように子どもと大人が育ちあう場が開かれている、そんな未来も遠くないと感じました。
ぜひみなさんも、『夢授業』に職業人として北九州キャリア教育研究会の活動に参加してみませんか?
北九州キャリア教育研究会の詳しい情報はこちら https://ja-jp.facebook.com/kitacareer/
開催等お問い合わせ連絡はこちら kita.career@gmail.com
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