八幡西区上香月にある『ちいさいおうち共同保育園』からは、元気いっぱいな子どもたちの声が聞こえてくる。子どもたちの一日は、就労の喜びを味わいながら足腰を鍛える「ぞうきんがけ」から始まる。そのあとは、子どもの発達段階に合わせて考案された全身運動の「リズム遊び」を行う。取材した日は、そのあと近くの白岩池公園に散歩に出かけ、凧揚げや斜面に生えた木の根っこを掴みながら登る「根っこのぼり」を楽しんでいた。遊びながら、「どうやったらうまく凧が上がるかな?」「次はどの根っこを掴もうかな?」と試行錯誤している様子がとても印象的だった。
散歩から帰ると、専任調理師さんの手作りの給食が待っていた。メニューには野菜がたっぷりと使われていたが、化学肥料不使用の胚芽米や契約農家の無農薬野菜を使うなど、素材にもこだわっているそうだ。味付けは素材のうまみを生かした薄味になっていたので、子どもたちにとっても食べやすいのだろう、おかわりをする子どもたちが大勢いた。
初夏に鯉をつかまえる行事を行ったり、年長児になると乗馬を行ったりするなど、「命」に触れる体験もする。子どもたちは本物の「命」に触れた感覚をもとに、保育者や保護者と協力して自分たちで鯉のぼりや荒馬のリズム遊びで使用する荒馬を作るそうだ。
『ちいさいおうち』は共同保育の形をとっており、保護者と保育者が協力して園を運営している。そのため、一般的な保育園に比べると保護者にも運営方法が見えやすいことが特長のひとつになっている。その一方で、NPO法人が母体ということもあり、認可保育所と比べると資金面で安定に欠く。それを補っているのが保護者と保育者で行う物販やバザー活動だそうだ。2014年度に「認定こども園」となり、行政からの補助を受けられるようになったそうだが、今後もよりよい運営体制を確立するための方法を模索する必要があるという。
「認定こども園」は、幼稚園機能と保育所機能を合わせ持つ未就学児を預かる新たな形態の施設として、現在徐々に広まりつつある。
園長の鹿(かの)江(え)さんは、「これまで、NPO法人という性格を生かし、公開保育やワークショップ、子育て支援講演会、学童支援のイベント等を開催し、地域に向け子育ての輪を広げる活動も行ってきた。今後これらの活動を進化発展させ、世間にもっと『認定こども園』という存在を知ってもらい『認定こども園』が社会で確固たる地位を築ける様に頑張りたい」と抱負を語る。
『ちいさいおうち共同保育園』の目標と理念に掲げられている文言のベースにあるのは、保護者と保育者と地域が一体となって、子どもたちを心も体も健全に育てていこうとする考え方だ。コミュニティが希薄化する現代にあって、これこそが子育てにおいて、最も求められていることなのかもしれない。
認定こども園 ちいさいおうち共同保育園
設置者:NPO法人 育ちのひろばちいさいおうち
園長:鹿江さとみ
所在地:北九州市八幡西区上香月1丁目2番12号
電話・FAX:093-617-9695
記事 北九州市立大学 池上はるか・原田萌黄
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